走査型アトムプローブ
 アトムプローブは1969年に、米国ペンシルバニア州立大学のミュラー教授(E.W.Muller)により開発されました。アトムプローブの分析領域は電界イオン顕微鏡(FIM)による試料表面の観察より選択でき、電界蒸発したイオンが後方に取り付けられた質量分析器に入射するまでの時間とそのときに印加した電圧を測定することによりイオンを同定できます。アトムプローブの特徴は、金属叉は半導体試料表面の原子一つ一つの直接観察だけでなく、試料表面の1原子層づつの分析により、組成を同定することが可能なところです。(組成は検出されたイオンの質量/電荷の比(Mass to Chatge : M/n)から求める事ができ、例えば質量数56の鉄(Fe)が+2価のイオン(56Fe2+)で検出された場合は、56/2 = 28となります。)
 しかし、アトムプローブによる分析は先端の曲率半径が1000オングストローム(1000 × 10-8cm)以下の針状の試料に限るという制約もありました。




 話を元に戻しまして、走査型アトムプローブは、アトムプローブの分析試料に対する制約「先端の曲率半径が1000オングストローム(1000 × 10-8 cm)以下の針状の試料に限る」を大幅に緩和するというところに開発の意図がありました。この分析装置の開発者である西川治教授は、「電極と試料の距離を近づければ、平面上の微細な突起にも高電界を与えることができる」と考え、走査可能な漏斗型の引出電極を試料直上に配置することにより、この制約を緩和することに見事に成功しました。この成功により、金属や一部の半導体に限られていた分析試料が、人工ダイヤモンドや基盤上のカーボンナノチューブといったものにまで広がりました。
 
人工ダイヤモンド
カーボンナノチューブ
シリコン
金属
 走査型アトムプローブ(Scanning atom probe : SAP)は西川治教授が開発した表面分析器です。まず、走査型アトムプローブを説明する前に、その原型となったアトムプローブ(Atom probe : AP)について説明します。

電界蒸発
電界イオン顕微鏡
電界放射顕微鏡
アトムプローブ
電界電子放射