塑性加工研究室

ものづくりのプロセスをトータルで考える

材料を外力によって自由に変形させる加工法を「塑性加工」といいます。良い製品を生むには加工工程の良否も重要です。研究室では「素形材から製品まで」を目標にして、塑性加工の中で代表的加工法である圧延加工とプレス加工(鍛造、せん断加工)を主な研究対象としています。自動車のボディを例にすると、高品位な板材料の提供から効率よくボディ形状に成形するプレス加工法までの一連の工程と捉えて、ものづくりを総合的に考えます。

KEYWORDS

  • 塑性加工
  • 生産工学
  • ものづくり
  • コンピューターシミュレーション
瀬川明夫

瀬川 明夫

教授・博士(工学)

石川県金沢二水高校出身

略 歴
金沢工業大学工学部機械工学科卒。同大学大学院工学研究科修士課程(システム設計工学)修了。同大学大学院工学研究科博士課程(システム設計工学)修了。(株)ステンレス久世品質保証職を経て、1997年本学助手就任。講師、助教授を経て、2017年現職。
専門分野
塑性加工
担当科目
機械系製図Ⅰ、機械の原理・演習、材料科学Ⅰ、機械設計演習、
プロジェクトデザインⅢ(瀬川明夫研究室)、機械系製図Ⅱ、機械要素設計、 
材料科学Ⅱ、3D解析・設計  専門ゼミ(機械工学科)、ものづくり工学研究(瀬川明夫)、
ものづくりデザイン統合特論  

RESEARCH

真空雰囲気を利用した高付加価値成形加工技術の提案

真空雰囲気を利用した高付加価値成形加工技術の提案

真空雰囲気を利用することはこれまでも種々の分野で行われた。当研究室では、塑性加工分野の圧延加工に真空を適用し、金属系複合材料の製造において、真空+高温下の雰囲気中で高い接合強度と優れた表面性状を兼備する高付加価値製品の創製を可能とした。また従来では接合が困難とされた組み合わせでも接合可能であることを実証した。この時蓄積された真空雰囲気に対する知見を応用し、現在は熱間加工のシミュレーション技術であるScale Transfer 法を提案し、加工中の酸化物そのものの状態を可視化することに成功した。今後は、圧延加工以外への適用の拡大を探索するとともに、シミュレーション技術としても応用する。

高張力鋼板のプレス加工に向けた加熱機構を有する金型の設計

現在の自動車は低燃費実現のために車体軽量化に取り組まれている。非金属材料を用いる場合もあるが、形状加工の自由度から金属材料を用いることが一般的である。一方で乗員保護のための安全性の向上も必要であり、高剛性化も必要である。軽量化と高剛性を両立するために高い強度を有する高張力鋼板の適用が進んでいるが、加工の困難さから加熱して加工する方法がとられる。本研究は加熱に要するエネルギ低減と加工工程の効率化を実現する新たな加熱方法として、プレス金型内にヒータを挿入して、金型自体を高温にし、加工材料に熱を加え、加熱と加工を同時に行うプロセスを研究している。コンピュータ伝熱解析と実験の両方で検討している。

コンピュータによる板材矯正加工シミュレータの構築と通板挙動の評価

圧延後に現れる反りや曲がりを矯正する加工が行われているが、加工条件の設定は熟練工の経験と勘に頼っている。本研究は、コンピュータシミュレーションを用いて、矯正条件探索ツールとなり得るシミュレータの構築を目的としている。実際の矯正加工状態を観察、荷重、ひずみ分布、残留曲率の計測を行い、実機データに基づいてシミュレータを作成した。シミュレータによる計算結果は、板材矯正の方法であるローラーレベラを忠実に再現したものとなっており、ロールとの接触位置、ひずみの極大値発生位置、通板挙動に良い一致が見られた。

3Dプリンタを利用した医療用コイルのカスタムメイド加工法の確立

脳動脈瘤治療法の1つである塞栓術用医療コイルの成形法に関する研究である。特殊な白金合金線を用いて、熱処理を併用して所定の形状を得ることが目的である。患者個々の患部の形状に合った器具を提供するため、患部データから3Dモデルデータを抽出し、3D-CADによる図面化と3Dプリンタによる造形を行い、患部を再現して、適切なコイル形状に繋げていくプロセスをカスタムメイドと定義している。本研究の成果は患者に優しい医療提供を目指しており、同時に治療コストの低減も図る。

チタンクラッド鋼の接合強度の改善

近年、加工性と機能性を兼ね備えた複合金属材料が注目されている。例えば、加工性に優れた鉄鋼材料と、耐食性に優れたチタン合金を組み合わせた材料は海洋構造物に利用されている。これらの材料はクラッド材と呼ばれ、異種材料の接合に伴う、接合強度の評価、金属間化合物の生成、加工精度の向上、接合適用範囲の拡大など多くの課題を有している。本研究は、特に接合強度に注目して、高い接合強度を実現し、同時に形状精度の維持、金属間化合物の抑制を行うために、雰囲気制御を併用した圧延加工を適用する。これまでに、接合強度を正確に測定する試験方法、真空雰囲気を利用することで低加工度と高接合強度の両立に関して成果を挙げている。

有限要素法による非対称圧延変形解析

圧延加工は適用範囲の広い加工法であり、素形材(板、棒、線など)の製造に適している。圧延対象材は単一素材から複合材まで多岐にわたり、特に上下ロールで接触条件が異なる非対称圧延は、形状不良の抑制などに効果を発揮することが期待される、一方で非対称圧延は条件の設定が困難であるため、本研究では、汎用の有限要素法を用いた解析コードを利用し、非対称圧延解析シミュレータの構築を目的としている。

高校で習う
科目

物理、英語、化学

ページトップへ