医用工学
高野則之 研究室TAKANO Noriyuki LABORATORY
材料科学の力で医療の未来を切り開く
医療においてケガや病気によって機能低下した部位に対して人工部材(インプラント)を用いた外科的な治療が多く施されている。人工部材を体内に長期間留置した場合、材質が変化し、破損や細菌感染などのリスクを伴う。本研究室では、各種材料の環境による劣化のメカニズムを解明し、それを防止する材料の開発を目指した研究を行なっている。
KEYWORDS
- 医療部品
- 水素エネルギー関連材料
- 環境と材料
高野 則之
教授・博士(工学)
東京都上野高校出身
- 略 歴
- 慶應義塾大学工学部計測工学科卒。同大学大学院工学研究科修士課程(計測工学)修了。新日本製鐵(株)中央研究本部第一技術研究所、第二技術研究所を経て慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程(計測工学)修了。1991年本学助手就任、講師、助教授を経て、2004年現職。
- 専門分野
- 骨セメント、金属中の水素、固体電子論
- 担当科目
-
電気基礎、機械力学Ⅰ、工業概論、計測・制御工学、医用生体工学、プロジェクトデザインⅢ(高野則之研究室)、
機械応用プログラミングⅡ、計測工学、専門ゼミ(機械工学科)、ものづくり工学研究(高野則之)、
先端材料工学特論、コーオププログラム(機械工学専攻)、コーオププロジェクト(機械工学専攻)
RESEARCH
水素脆性機構の解明とその防止策の検討
電気化学的陰極チャージ法を用いて水素チャージを行い、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの材料について水素拡散特性、水素脆化特性を明らかにしてきた。また、鉄単結晶やニッケル単結晶を用いて、フラクトグラフィーからこれらの材料中の水素脆化き裂進展過程を明らかにした。現在、水素関連材料として多用されているオーステナイト系ステンレス鋼の水素脆性機構の解明に取り組んでいる。水素脆性機構については、従来から幾つかのモデルが提案されているが、実験的に実証する事が難しい。そこで、専用のコードを開発し、計算機シミュレーションによる解明にも取り組んでいる。さらに、元素添加や表面処理により水素脆化を抑制する方法についても検討している。
合金設計のための仮想現実技術の開発
不規則合金の電子状態を実験的なパラメータを用いずに非経験的に求める第一原理計算コードを開発してきた。本コードでは完全な不規則合金の電子状態はもとより、結晶構造に関するパラメータや磁気モーメントなどの物性を予測することができる。さらに、短距離秩序を含む合金の物性予測も可能である。現在、侵入型不純物の導入と精度と信頼性を向上させる研究を行っている。また、古典的な分子動力学法を用いて引張挙動など動的な物性を予測する研究も行っている。この場合、原子間ポテンシャルの選択が重要であるが、合金の原子間ポテンシャルついて汎用性がありなおかつ信頼性の高いものがないため、簡便で利用性の高い原子間ポテンシャルの計算法についても研究を行っている。
生体置換用材料の劣化
人工関節を代表とするインプラントやその緩衝材として用いられえる骨セメントなどは、長期間の体内留置において、劣化して再置換が必要になるケースが度々生じている。劣化の要因を明確にし、半永久的に使用できるインプラント材を開発している。また、逆に骨の再生にあわせてインプラント自体が分解し、やがてすべてが生体骨に置き換わるようなインプラント材の開発を行っている。
医療機器の開発
医療や看護分野でのニーズに対応した機器の開発を行っています。左の写真は、術後腹腔内から排出される体液や血液などを回収するドレーナージにおいて、排液中の血液成分であるヘモグロビン濃度を判別し、患部からの出血を早期発見するための装置である。右の写真は、血糖値検査のための採血の際に誤って指に穿刺しないために開発した穿刺補助具である。
高校で習う
科目
物理、化学、生物、数学