生産システム工学
加藤秀治 研究室KATO Hideharu LABORATORY
複合加工技術の創製で新たなものづくりに挑戦
携帯電話などの機器は急速に小型化し、その部品加工には微細な加工技術が求められています。医療分野でも人工心臓の部品など小物部品には高い精度が要求されています。研究室では、高速かつ高精度で部品供給を可能とする加工技術の構築をめざし、工具材料の開発、新しい加工法の開発、さらに新規工具材料を用いた微細加工技術の研究を推進しています。
KEYWORDS
- 難加工材料もあざやかに切る!
- 製造業に欠かせない加工技術
加藤 秀治
教授・博士(工学)
岐阜県益田南高校出身
- 略 歴
- 金沢工業大学機械工学科卒。同大学大学院工学研究科博士課程(機械工学)修了。住友電気工業(株)ダイヤ製品事業部に勤務。1995年本学助手就任。講師、助教授を経て、2009年現職。2005年3月~2006年3月ドイツ・アーヘン工科大学WZL客員研究員。
- 専門分野
- 難削材加工、みがき加工、微細加工、高速・高精度加工、切削加工
- 担当科目
-
機械工学入門、機械工作法、機械加工学、プロジェクトデザインⅢ(加藤秀治研究室)、
プロジェクトデザイン実践(実験)(機械)、マイクロ・ナノ加工、アドバンスドマシニング特論、
機械工学専門実験・演習、専門ゼミ(機械工学科)、アドバンスドマシニング工学研究(加藤秀治)
RESEARCH
難削材の高精度・高能率加工に関する研究
人工関節や人工歯根などのインプラント材料には細胞毒性の少ないチタニウム合金が使用されるが、これらの材料は縦弾性係数が骨と大きく違うため弾性率が人骨(20-40GPa)に比べ 100GPa 程度と高く、応力遮蔽に起因する破骨細胞の作用によってインプラント周囲の骨吸収が生じる問題がある。の成形加工を目指しており、これには人骨に近い低弾性率(約 60GPa)や低熱膨張率を有す超弾塑性型ベータチタニウム合金やニオブチタン合金などの低ヤング率を有する合金素材が有効と考えられる。しかしながら、熱伝導率が低いことや著しい溶着性を示すことから加工が極めて難しく、インプラント部品の成形に支障をきたしている。本研究ではこれらの難加工材料の高能率加工を実現することを目的としている。
超硬合金材料を対象とした高精度・高能率磨き加工法の開発
超硬合金工具を用いてポリベンズイミダゾール材料の高速加工を行った場合に工具が急速摩耗することに着目し、逆転の発想でポリベンズイミダゾール材料を研磨工具として超硬合金材料の高精度・高能率表面仕上げ法の可能性を検討してきた。ポリベンズイミダゾール材料と超硬合金材料を17m/s 以上の条件で高速摺動させることにより、超硬合金材料の高精度・高能率表面仕上げが可能である(図1 参照)。また、この特異な現象はポリベンズイミダゾール材料の分子構造の一部が切れ、数十ナノオーダーの微細な摩耗粉が生じることと、分子構造の一部が切れた際に摩耗粉が活性状態になることと、高速摺動による発熱に伴う化学的な作用が付加され高能率な研磨が実現されている。今後はポリベンズイミダゾール材料を用いた超硬合金金型の研磨条件の最適化と応用(図2 参照)を目指している。
新規加工法の開発
焼入れ鋼は耐摩耗性に優れていることから、金属同士の摩擦や繰り返し荷重が加わる自動車用エンジン部品などに使用されている。焼入れ鋼の仕上げ加工はcBN焼結体工具やTiAlN被膜工具などの耐摩耗性に優れた工具材料の開発により、汎用性の高い切削加工に代替されてきているが、十分な高能率化は実現できていない。本研究では、(i、Al)N/(Ti、Si)N被膜工具を用いてたロータリー工具を用いて駆動型ロータリ加工を行い、送り量を増加させることにより3-5倍の高能率加工を可能としてきた。
高能率加工を可能とする切削環境の最適化
難削材の加工においては切削温度の上昇や溶着性が工具寿命に直接的に影響を及ぼす場合が多くみられる。また、資源保護の観点や廃液処理に起因する環境問題の解決のため、加工のドライ化や二アドライ化が進みつつある。中でも、極微量切削液供給(MQL加工)が汎用性の高い二アドライ加工として普及している。MQL加工では、油剤に含まれるエステルが金属新生面に吸着し潤滑作用のある吸着膜を生成するため工具と切りくず間の凝着の改善が期待できることや、加工点にマイクロドライアイスパウダーを供給する加工方法(DIPS加工)が冷却効果やドライアイスが昇華した際の二酸化炭素による工具の酸化抑制に効果があることが報告されている。本研究では切削環境をコントロールすることにより難削材の高能率加工の実現を試みる。
高校で習う
科目
数学、物理、化学の基礎科目、機械工作法