計算機シミュレーションによる超低磁場MRIの原理 その4

MR信号のサンプリング

勾配磁場によって磁化分布が周波数エンコーディングおよび位相エンコーディングされた核磁気共鳴信号(MR信号)は適当な周波数でサンプリングされk空間が作成される。これを2次元フーリエ変換することにより磁化分布の再構成画像が得られる。

MR信号から画像再構成の流れ

ところで、サンプリング周波数を一定にして静磁場の強度を変えた場合はどうなるであろうか?下図に示すように出現位置は異なるが再構成画像そのものは同じであった。k空間の真ん中付近のMR信号波形とサンプル波形をみると静磁場を10倍にした場合はアンダーサンプリングになっている。それでも再構成画像が同じになるのはなぜだろうか?


静磁場強度の違いによる再構成画像の違い


アンダーサンプリングで良い理由

その理由を1次元の磁化分布で考えてみる。いま下図のように1次元上に2つのピークをもつ磁化分布を想定し、100Hz〜103Hzで周波数エンコードしたMR信号をサンプリングする。ナイキスト周波数より高い周波数でサンプリング、すなわちオーバーサンプリング条件のk信号のフーリエ変換は正しく100Hz付近と102Hz付近に周波数ピークが出現する。サンプリング定理を満たしているのでエリアシングは発生しない。ただし、100Hz以下の部分は0であり、画像再構成に不要な成分である。つまり、フーリエ変換に無駄な部分が多いことになる。そこで、あえてアンダーサンプリング条件でサンプルしてみる。本来ならばエリアシングを起こすのだが、100Hz以下は0であるため重なって折り返し歪みは生じない。したがって、うまくサンプリング周波数を選ぶことによって必要とするスペクトル構造の部分のみを抽出することができる。これをサブサンプリングというらしい。

オーバーサンプリングとアンダーサンプリング

下図はどこまでサンプリング周波数を下げてもスペクトル構造が保てるかを示したものである。fsが10Hzの場合、2.5Hz〜5Hz部分が0でまだ無駄な部分が存在する。5Hzにするときっちり収まり、無駄な部分が無くなる。ただし、途中の6Hzでは折り返し歪みが発生し、スペクトル構造が変化してしまう。

どこまでサンプリング周波数を小さくできるか?

アンダーサンプリングの応用:振幅変調の復調

振幅変調の代表例とそのシミュレーション波形およびスペクトルを示す。


振幅変調のいろいろ

振幅変調のアナログ回路的復調例を示す。搬送波がある場合にはダイオード等を用いた半波整流回路を通すことにより低周波域に変調信号成分が出現する。搬送波がない場合には搬送波周波数と同じ信号を加えて半波整流方式を適用するか、搬送波周波数と同じ周波数で同期検波する方式がある。


アナログ的復調

アンダーサンプリングの原理より振幅変調波を搬送波周波数と同じ周波数でサンプリングすると低周波域に変調信号成分が出現する。搬送波がある場合には搬送波成分は直流となる。


サブサンプルによる復調

先の振幅変調信号をアンダーサンプリング方式で復調した結果を示す。USBの復調はちょっと不思議な感じ。近年かなり高速のADボードが開発されており、高周波増幅されたAM波を直接高速サンプリングしデシメーション(データ間引き)等で復調するラジオができるかも。。。


サブサンプルによる復調例

つづく