MEGを用いた「蛇の回転」錯視のメカニズムの解明

論文のPDFはこちら(第22回日本生体磁気学会大会論文集)

目的

「蛇の回転」(北岡 http://www.ritsumei.ac.jp/~akitaoka/)は非常にダイナミックな動き感じさせる錯視画像の一つとして知られている。画像には時間的な変化がないにも係わらず、見る人に動き(回転感)を感じさせる。本研究ではMEGを用いて本錯視画像が動きを感じさせるメカニズムについて考察を行った。

蛇の回転


実験1:錯視画像注視時の自発脳磁場計測

「蛇の回転」画像をみているときの自発性脳磁場の計測を行った。MEGは金沢工業大学で開発された全頭型160チャネルMEGシステムを用い、被験者は仰臥位の状態で計測を行った。画像の提示は被験者の目の位置からやや下方前方の位置にスクリーンを設置し、磁気シールドルームの外からプロジェクターを用いて投影した。コントロール画像として同じ大きさの風景画を用い、錯視画と交互に30秒間ずつ提示を行った。

測定結果

計測された脳磁場波形の一例を示す。「蛇の回転」画像の方がコントロール画像より振幅が大きくなっている。時間軸を拡大するとスパイク状の波形が連続的に発生していることがわかる。

これらのスパイク波を集めて加算平均し、そのピーク時の等磁場線図を描いた。視覚野の反応であることを示し、実際にダイポール推定をすると両半球の視覚野鳥距講付近に推定された。

実験2:単色画像を用いた誘発脳磁場計測

「蛇の回転」画像は背景の白を除くと主に3色(青、黄、黒)で構成されている。各色の「蛇の回転」単色画像を作成し、それぞれの視覚誘発脳磁場波形の比較を行った。刺激提示装置は実験1と同じものを使用し、各色の単色画像およびオリジナル画像を約1秒間隔でランダムな順序で提示した。1枚の画像提示時間は200msとした。

測定結果

各色の画像に対する加算平均波形を示す。波形は同一のセンサのものを示している。図にしめすように黒、青、黄の順にピークの潜時が遅れる結果となった。

考察

実験1の結果より「蛇の回転」画像は他の静止画像と比較すると視覚野の神経を連続的に発火させる性質があることが分かった。補足実験として回転感を生じさせない単色の「蛇の回転」画像を用いた場合にも同様な波形が観測されたことを考慮すると、この神経の連続発火そのものは回転感固有の神経活動ではないものと思われる。実験2の結果において、「蛇の回転」を構成する色に対する反応時間の違いが観測され、黒、青、黄の順にピークの潜時が遅れる結果となった。この順番は実際に回転する方向、すなわち、黒->青->(白)->黄に対応しているものと思われる。「蛇の回転」錯視のメカニズムは、そのパターンが自然発生的に視覚野を興奮させる性質を持ち、その際に色に対する時間差が動き感(回転感)を生じさせるものと思われる。

補足実験