Research Works of Graduate Student |
おしながき > 研究活動
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準天頂衛星みちびきの補完信号を用いた測位評価 平成27年度 |
関口 直朗 |
GNSS(Global Navigation Satellite System)による測位は、人々の生活に欠かせない技術として広く利活用されている。現在、我々が主に利用している測位衛星は米国のGPS であるが、その他にロシアのGLONASSや欧州のGALILEO、中国では北斗(Beidou・Compass)、日本の準天頂衛星がある。しかし日本では山陰やビル陰などの影響で、当該地域において衛星測位に必要な4機の視野を確保することは困難である。そこで日本政府は2010年に準天頂衛星(Quasi-Zenith Satellite:QZS)初号機みちびきを打ち上げた。準天頂衛星システム(Quasi-Zenith Satellite system:QZSS)は日本が整備する日本のための衛星測位システムである。QZSSは日本における衛星を使用した位置情報取得サービスの高精度化や信頼性の向上及び、安否情報などの配信が目的である。みちびきにはGNSSの補強機能と補完機能があるが、現時点では、単独で機能するものではなく、米国において打ち上げ・運用が行われているGPSなどと連携してその役割を果たしている。QZSは2018年を目途に4機体制なり、4機打ち上げられることで、日本の天頂に常時1機のQZSが滞在することが可能になり、測位可能場所・時間率が大幅に向上することが期待されている。 |
北陸地方における準天頂衛星のLEX信号を使用した精度検証実験 平成25年度 |
白石 宗一郎 |
現在、位置情報の取得方法としては衛星測位システムが主流となっており、日本をはじめ
とする世界各国でGPSが使用されている。しかし、GPSはアメリカの運営している測
位衛星システムであり有事の際に使用することは不可欠であり、現在はGPSを含む、G
NSSを使用することなく、生活を行うことは不可能であり、第5番のインフラとして機
能している。そこで、GPSを使用することなく衛星測位を行うことのできる環境を構築
することを目的とし、先進国が中心となり独自のGNSSを配備する動きが広がってい
る。日本も例外ではなく、準天頂衛星システムの構築をすべく、初号機であるみちびき
を打ち上げた。そこで本研究では基盤地図の即時更新可能性や屋内外シームレス測位への
利用可能性を目的として、準天頂衛星のLEX信号を使用し、北陸地方で実証実験を行
った。本論文はLEX信号を使用した測位の精度を検証したものである。 |
屋内外シームレス測位実現に向けたGNSSとRFIDを用いた位置情報取得方法について 平成23年度 |
竹内 明香 |
2007年に地理空間情報活用推進基本法(以下基本法)が施行され、人々が安心して豊かな生活を営むことができる社会を実現する上で、地理空間情報を高度に活用することが極めて重要である。基本法によれば、国や地方自治体は信頼性の高い衛星測位によるサービスを安定的に享受できる環境を整備し、国民の利便性の向上に貢献しなければならないと記載されている。つまり、高度な地理空間情報社会を構築するために必要なことは、即時に正確な位置情報を取得し、その位置に関連した正確な地図情報の表示と提供であるといえる。 |
高度空間情報社会実現のためのリアルタイムGISを用いた基盤地図情報の更新と
地域変換パラメータの有効性について
平成20年度 |
守屋 三登志 |
平成19年5月30日に地理空間情報活用推進基本法が公布され、基盤地図情報が満たすべき基準が示された。この基盤地図情報では、GISを利活用することにより業務の効率化および経費の削減が期待されている。しかし、基盤地図の整備範囲は広域かつシームレスであるため、その作成・維持には多大な労力と時間が必要になる。また、地図更新に関しても、確立された手法や運用事例はない。 |
ユニバーサルマップの実現に向けたリアルタイムGISとICタグの有効性について 平成19年度 |
島野 宗太 |
我が国は高齢化社会にあることから、すべての人々が安全・安心で快適な生活を営むことができる社会形成が求められている。政府はすでに政策として高齢者や障害者のためのバリアフリー設備の設置を急いでいるが、設備が整ったとしても人々が安心かつ安全に目的地まで到達する経路を容易に知ることは難しい。また、平成19年5月30日に地理空間情報活用推進基本法が公布され、今後は高精度位置情報を活用する安全かつ安心な空間情報社会が到来することは間違いない。 |
リアルタイムGIS実現のための大縮尺地図の座標変換について 平成17年度 |
奥野 亜紀 |
全国の自治体では公共工事や地籍調査のためにさまざまな測量を行い、大縮尺の基本図・主題図といった電子地図を利用している。しかし、多くの地方自治体では、これまでに作成してきた電子地図の効率的な更新方法が確立されていない現状がある。特に、各自治体が共有利用している基本図に関しては、地図の作成・更新に3ヶ月から6ヶ月の時間を要しており、業務に支障をきたしている。 平成14年度をもって国土交通省国土地理院は世界測地系を採用した。また、平成17年度6月には「ネットワーク型RTK-GPSを利用する公共測量作業マニュアル(案)基準点測量」の認証がなされ、GPSの利用可能性が急速に高まってきている。 筆者らが提案する「リアルタイムGIS」を用いることによって、自治体の保有している大縮尺地図の即時更新が可能であることは実証済みである。「リアルタイムGIS」とは、工事現場等においてRTK-GPS測位によって取得したデータを携帯電話により自治体のサーバに転送し、大縮尺の基本図を即時に更新するシステムのことである。GPSとGISとのデータの流通を円滑に進めるには、自治体の保有する大縮尺地図を日本測地系から世界測地系へ座標変換する必要がある。現状では自治体の保有する地図のほとんどが旧日本測地系であるため、GPSで取得したデータをそのまま利用して更新することができない。 新旧座標系の位置合わせの問題を解決するために、新井智恵子氏(平成14年度修士修了)は独自に基準点を確保し、図面単位(1図画とその周辺の4図画を含む5図画)で変換パラメータを作成する必要があることを明らかにした。しかし、独自に基準点を設置する際に、座標値の読み取り誤差や現地の確認ミスがあり、座標変換後の精度に大きく影響するということが問題点として残った。 本研究では、位置情報が明確な土地区画整理によって整備された基準点を利用して基準点を設置し、地域性を考慮した「高精度地域変換パラメータ」を作成した。検証実験は金沢市の2箇所で実施し、パラメータの最適な作成方法とパラメータの適応方法の検討を行った。 まず、国土地理院が提供する変換ツールを用いて、独自に設置した基準点を世界測地系へ変換したところ、地域によってずれの大きさと向きが大きく異なることが明らかになった。このことにより、新旧測地系を正確に一致させるためには、地域ごとのパラメータが必要であることが明確になった。 次に、地域A、Bでアフィン変換を使用して「高精度地域変換パラメータ」を作成し、独自に設置した基準点を世界測地系へ変換した。適応地域を広げて座標変換を行った場合、GPS観測値との標準偏差は通常の場合の2倍程度となった。また、AとBを入れ替えてパラメータを適応した場合、標準偏差は通常の4〜5倍になった。 さらに、アフィン変換で求めた「高精度地域変換パラメータ」使用して、自治体の保有する大縮尺地図を世界測地系へ座標変換した。実証実験から、検証地域の一部では新旧測地系の座標変換を正確に実施することができた。また、VRS-GPS測位結果の整合性も証明できた。しかし、ずれの地域性が極めて複雑であるため、一部の地域においては正確に座標変換することができなかった。この対応策としては、国土地理院により平成16年度から3ヵ年計画で実施されている「都市再生街区基本調査」により整備された基準点を使用することが挙げられる。この調査は全国の人口集中地区で実施されており、調査対象となっている市区町は751にものぼる。街区基準点は200m間隔に設置されており、非常に高密度で高精度なデータである。地元自治体もこの調査の対象となっており、この点を利用することによって地元自治体全域の新旧測地系のずれを高密度に把握することが可能になると考えられる。例えば、回転のずれを含む地域ではより細かく「高精度地域変換パラメータ」を求めたり、広域でほぼ同じ大きさで同じ方向ずれの場合は広域の「高精度地域変換パラメータ」を求めたりするなど、容易に座標変換の計画を立てることができると考えられる。また、近い将来、基準点設置の際にICタグなどを用いた、より効率的な基準点の設置方法や管理方法が確立されることを期待している。 |
RTK-GPSを用いたリアルタイムバリアフリー地図更新に関する研究 平成15年度 |
松田 尚子 |
本格的な高齢社会を迎えた現在、我が国ではノーマライゼーションの概念のもとに、誰もが住み慣れた地域の中で当然の権利として日常生活や社会活動を行い、可能な限り自立した生活をおくることができる社会が望まれている。現在、公共施設や交通機関などの各分野において、バリアフリー整備が部分的かつ点的に行われている。それらの設備を高齢者や身体に障害をもつ方、妊婦などの移動困難な方が有効的に活用し、自らが選択して自由に外出するには、それらを繋ぐ歩行空間のバリアフリー整備が必要となってくる。バリアフリー整備に加えて、移動困難な方が事前に施設や道路等のバリアフリー情報を地図と関連付けて認識することで、目的地及び目的地に行くまでの行程が安心して移動可能であるかを把握できる。このように、移動困難な方が、初めて通る道でも安全に行動するには、高精度かつ最新のバリアフリー情報が容易に入手できるシステムが必要となる。これまでも一般に、様々なバリアフリー地図は作成されてきた。しかし、情報の収集と地図の作成に多大な時間と労力を要する、地図を紙媒体で作成したために更新が困難などの問題により作成が滞っている例が少なくない。 そこで、本研究は歩行空間のモビリティ確保を目指した情報の収集と提供のために、リアルタイムバリアフリー地図更新システムを提案した。本研究におけるバリアフリー地図を以下に定義する。まず、地方自治体が保有する電子地図(基本図)上に車椅子が通行可能であった軌跡を表示させる。この際、車椅子にRTK-GPS受信機を取り付けて絶対位置情報(緯度・経度・高さ)の取得を行う。RTK-GPSは(1)高精度な位置情報の取得が可能(2)データの時系列管理が可能(3)リアルタイムなデータ更新が可能(4)測位が簡易的という特徴がある。高精度な測量と円滑なデータ取得や管理・更新を行うために、RTK-GPSを用いる。取得した絶対位置情報からは、2点間の移動距離、傾斜勾配、電動車椅子消費エネルギー等の算出が可能となる。更に、地物の形状を視覚的にイメージしやすいように、移動距離と出発点からの相対的な高さを軸にとった断面図(2次元、3次元)を作成する。上記の属性を持った地図を『高精度な位置情報表示に特化した地図』と称する。小範囲なエリア(例として金沢工業大学キャンパス内)に限定して高精度な位置データ表示に特化した地図を作成した上で、ユーザーが外出する際に必要となる情報(ピクトグラム、現地写真等)を表示させた地図を『バリアフリー地図』とする。加えて、バリアフリー地図の背景に航空写真を用いることで、通行可能な箇所と不可能な箇所を視覚的に明らかにする。 バリアフリー地図を作成するにあたってはまず、リアルタイムにデータを更新する方法を提案した。更新方法としては鹿田研究室が提唱している「リアルタイムGIS」の概念を用いた。また、RTK-GPS取得データの信憑性を裏付けるために精度検証(水平方向、鉛直方向)を行った。水平方向の精度に関しては許容範囲内であった。しかし、鉛直方向のデータに関しては、固定点で静止して観測したにもかかわらず、変動が予想以上に大きかった。そのため、鉛直方向データの変動の観察、データ分布の観察、最確値を採用した場合の精度検証という過程を経て、データの真値を決定し、その精度検証を行った。更に、鉛直方向データに関して、3種類の補正情報(RTCA、CMR、RTCM)を使用して取得されたデータの標準偏差とレンジを比較することで、使用に最適な補正情報を決定した。また、福祉分野の専門家との協議により、バリアフリー地図に必要な情報や、絶対位置情報の表示方法について検討した上で、バリアフリー地図作成シミュレーションを行った。この際、例として車椅子利用者を対象とした。 本研究の大きな特徴は、データを取得する車椅子利用者が、GPS受信機を意識せずに道路を通行するだけで高精度な位置データが手軽に測位可能であるという点にある。このことはボランティアによるデータ収集の必要もなく、利用者自らが、日常の生活をおくりながら随時最新のデータを更新できるという簡易さがある。また、移動困難な方は各々の病状や体力に個人差があるため、一般的なバリアフリー地図の作成は困難であり、正確な位置情報にもとづいて得られた情報をもとに、利用者個人が対象箇所を通行可能であるか否かを判断するという視点で作成した。この手法を用いることにより、利用者の身体能力、使用機器やニーズに合わせてオリジナルなバリアフリー地図の作成が可能となる。今日、カメラ付携帯電話やインターネットの普及により、利用者の視点で情報収集、提供を行う行為が容易になってきた。これらの情報技術と本研究で提案した空間情報工学技術を融合させ、位置情報とバリアフリー情報を広く共有することで、移動困難な方が自由にライフプランを設計し、生活クオリティーの向上に繋がることを期待する。また同時に、バリアフリーが成されていない箇所を提案することは、行政にバリアフリー整備の必要性を訴える契機となるであろう。 |
自治体が保有する大縮尺ディジタル地図の有効利用に関する研究 平成14年度 |
新井 智恵子 |
全国の自治体では大縮尺の図面を用いて、地理情報システム(GIS)を整備する動きが急速に高まってきている。この背景には、全庁型基図の利用により業務の効率化および経費の削減を期待し、さらにデータの共有化により住民へのサービスを向上させるという目的がある。しかし、地図データーベースの維持・更新には多大の労力と時間が必要であり、地図の更新方法には確立された手法も、運用事例も決定的に少ないのが現状である。特に、各自治体が共有利用している基本図に関しては、数年に1回しか更新されず業務に支障をきたしている。 この問題を解決できる技術の1つがGPS(汎地球測位システム)を利用したリアルタイムキネマティック(RTK-GPS)測位である。本研究では、高精度で即時性のあるRTK-GPSを用いて即時にGISの電子地図に反映させる技術の実現について考察した。また、導入により期待できる費用軽減効果についても調査した。従来のGISと区別するため、本研究ではこの技術を「リアルタイムGIS」と定義した。 まず、「リアルタイムGIS」実現のために実証実験をおこなった。これらの実験は平成13年2月に設立された「リアルタイムGIS実証実験コンソーシアム」(産官学の研究会)が主体として実施した。実験では、地元自治体の特に即時性が問われる施設管理部門を例に挙げ計3回のモデル実験を行った。実際の水道管埋設工事現場での実験により、十分実用出来ることが確認できた。 また、RTK測量による1点あたりの測位時間は数十秒程度であり測量作業も1人で実施することが可能であるため、非常に簡単に迅速に地図の更新ができることを実証できた。 導入による費用軽減効果については、自治体、民間測量会社に対する調査より、初期投資を別としてかなりの軽減効果(現在の約55%)が期待されることが分かった。 「リアルタイムGIS」を用い電子地図を即時に更新することが可能になれば、精度のよい位置情報が自治体において全庁的に流通し、常に最新の地図を用いることができる。現状では地図の認定の問題等もあるが、業務の効率化および経費の削減を期待でき、さらにデータの共有化により住民サービスの向上につながる。現時点で業務に使用するには問題が残るが、RTK-GPSは、観測されたデータの精度やGISへ簡単に利用できること、位置情報と時間を合わせ持つことなど利用価値があり観測条件が良好であれば、施設管理台帳作成のための測量には十分対応できる。 一方で、RTK-GPSで取得したデータを自治体が持つ大縮尺基本図に反映させるためには、地図の座標系変換が必須である。国土地理院が提供する変換ツールは、原則として国家基準点を対象としており、面積が狭い一市町村単位での図面区画では変換に必要な点数を確保することは困難である。国内においても基準点が整備されていない自治体がほとんどである。 本研究で検証したような1/500〜1/1000で作成された大縮尺基本図や主題図では、国土地理院が提供する変換プログラムを用いてもGPS観測値と自治体の持つデータの間には無視できない程度の誤差があることが示された。そこで本研究では、RTK-GPSのような即時性の確保できる方法で更新するために必要な既存ディジタル地図の簡易的な変換方法についての手法を提唱し考察した。 まず、一市町村単位で座標変換する方法を試みたが、正確に変換することができずGPS測位結果を正確に反映できなかった。この原因には、変換対象範囲が広すぎまた、自治体が保有する公共基準点では必要な基準点の確保が困難であることが挙げられた。そこで本研究では、独自に基準点を確保し図面単位で変換パラメータを作成することにより、施設管理台帳の水平位置精度を許容できる範囲で正確に変換することができた。この作成されたパラメータを「高精度地域パラメータ」と称した。 測地成果2000による測地系の変化により、GPSとGISとのデータの流通が円滑に進み、GPSとGISの連携が急速に進展してきている。そのため自治体が保有する既存地図を今後有効利用するためには、世界測地系への正確な変換が必要不可欠である。本研究で提案した「リアルタイムGIS」に関しても、GPSとGISさらに高解像度衛星に代表されるRS技術の連携により、より利用価値が高くなるであろう。この技術は、基盤整理、ハードウェア、ソフトウェアに支えられた新しい技術であるため、今後の改良が必要である。位置情報技術の急速な発展により今後GPSにより作成されたデータが地図作成にかかわらず、様々な方面で利用されるようになれば、相乗的に技術の発展が見込まれる。 |
空間情報工学を利用した海岸線の生態環境変動の調査に関する研究 平成13年度 |
児玉 哲也 |
1997年1月に発生した「ナホトカ号重油流出事故」は日本海側の海岸に多くの重油を漂着させ、海岸に生息する動植物はこの重油の漂着や取り除き作業等により大きな被害を受けた。また、重油を含んだ大量の砂が建設用重機を用いて回収、埋め立てされたことにより、植物群落の欠損を引き起こし、さらには海岸線の地形の変化も見られた。我々の研究室ではこの事故をきっかけに、1998年より現在まで石川県加賀市塩屋海岸・片野海岸において事故後の海岸線の生態環境変動調査をおこっている。海岸の生態環境変動調査では、植生の位置変化を捉えなければならず、目標物がほとんどない海岸で、同一の地点を見つづける必要がある。また、事故以前は調査をおこなっていないため、事故前後の変動の比較をしようとすると、ナホトカ号事故以前の既存のデータと我々の調査データを重ね合わせる必要がある。そこで、本研究では事故後の海岸植生の変動状況を捉えるため、空間情報工学を利活用して、植生の位置変化および植生の有無による海岸の標高変化を解析するとともに、片野海岸・塩屋海岸での急激な植生の変化は、ナホトカ号事故の影響が少なからずあるということを立証することを目的とした。しかし、植物の変動、海岸の標高変化には浸食や飛砂等の気象条件による影響も要因として含まれる可能性があるため、気象データ解析をおこない気象による影響の有無を確認した。 本研究の特色は、使用したデータが、ナホトカ号事故後の生態等の変化を抽出するために海岸でおこなった極めて精密な調査測量結果であることである。この調査は植物の移動、衰退および標高の微妙な変化を同じ地点で時系列に測定することに意義がある。調査測量は季節ごとの植生の変化を把握するため、毎年5月から11月にかけて、4年間で計16回おこなった。調査測量の手順は、まず現地に測量器材を持ち込み、基準点を定め、その点から塩屋海岸では40m×150m、片野海岸では40m×100mのメッシュを作成した。その後、各交点の標高をオートレベルにて測定していき、同時にメッシュ内の植生の位置と標高も測定した。また海岸では目標物や、標高の基準となる点が存在しないため、基準点は以前からその場所にあった固定点とし、その緯度、経度および標高をGPS測量を用いて、最も近い四等三角点より求めた。また海岸の植生フロントラインを求めるため、1999年より毎年9月にDGPSによる調査をおこなった。この調査はDGPS器材を持ち、片野海岸・塩屋海岸の間の植生フロントラインに沿って歩くといったものである。DGPSは1秒毎にデータを取得でき、精度もSAの解除により1m程度になったため、このような調査には有効な手段である。解析においてはまず、気象データを用いた。データは風向、風速および潮汐について、ナホトカ事故以前と事故後のデータを比較した。この解析は事故の影響を純粋に抽出するためにおこなったものである。解析の結果、特殊なデータが出た場合、生態環境の変動が事故の影響であるということは断定できない。しかし、それぞれのデータについて事故前後での特殊な事象は起きておらず、気象に関しては植生衰退の要因から省いても問題ないといえる。次に、調査データについてGISソフトウェアを用いた解析をおこなった。植生の位置についての解析では、数値地図25000(地図画像)を背景に、事故以前である1994年の航空写真を重ね合わせ、航空写真から目視にて得られた植生フロントラインのデータを基準として、DGPSにて取得した3年分のデータとの比較をおこなった。次に、それぞれのデータが基準より沖側に移動している面積、岸側に移動している面積を算出したところ、各年共に岸側に移動している面積が多いことがわかった。このことから、植生位置は平均的に事故以前より後退しているといえる。植生の標高については調査測量データを用いたが、これは常に植生が存在した点と、存在しなかった点を分類し、その変化の大きさを比較した。その結果、常に植生が存在した点の変化の平均は20cm程度内にほとんどおさまっていたが、植生が存在しない点ではそれ以上、大きいところでは平均で80cm以上もの変動が見られた。これまで海岸の標高の変動が植物によって抑制されているということは、概念的には理解されていたが、この調査・計測により、その事実が定量的に表された。そして、両海岸での植生の変化はナホトカ号事故の影響が少なからずあるということが立証できた。また、空間情報工学を用いて植生の位置を測定したことによって、植生の位置変動はどの海岸においても人手を伴わず、高精度で把握できるということが実証できた。 |
自治体が保有するGISデータを利活用した避難経路のシミュレーションについて 平成12年度 |
織田 珠枝 |
わが国は世界でも有数の地震大国であるとともに、台風等の自然災害も多い風土で ある。近年の主な自然災害やその被害状況等から、わが国における防災対策の充実・強化は緊急かつ重要な課題としてあげられている。先の阪神淡路大震災では、 行政による対応の遅れから、多くの人命・財産が失われ長期に渡って都市機能が麻痺した。また、個々の建物や都市インフラへの耐震設計の適用、行政の地域防災計 画に盛り込まれた整然とした復旧計画などいった事前対策の充実に反して、地震発生と被害に対する危機意識の気薄さ、災害に対する認識の甘さも露呈する形となっ た。このような教訓から、地震被害予測システムなどのシステムが構築され、震災対策におけるGISの有効利用が取り上げられた。また、国土空間データ基盤の整備 が進み、GISを構築する際の最も基本的なディジタル図形データである数値地図2500(空間データ基盤)の刊行範囲が広がった。このデータは廉価で購入しやす く、幅広い分野での利用が期待されている。また、自治体は図形データとして地図上に描かれている建物や道路などの地形情報と属性情報を管理している。このよう な背景から本研究ではGISの手法を用い、数値地図と自治体が保有するデータを使用し、道路の安全度の評価方法を検討するとともに、その安全度を用いて任意の地 点から目的地に至る安全かつ最短な経路設定のシミュレーションおこなうことを目的としている。 この研究の特色は、自治体が既に保有しているディジタル地図と 廉価に購入可能な数値地図を用いたことである。災害が生じた場合、建物の老朽化による倒壊や火災により、道路が遮断され通行止めになる可能性がある。その場 合、避難場所までの経路を最短経路と設定することが必ずしも安全であるとは限らない。今回、おこなったシミュレーションは結果的に距離が長くなっても、安全に 避難することを第一条件としており、独自に算出した道路の安全度をもとに、避難地までの避難経路の算出をおこなっており、高齢化社会が進む現在、研究成果が実 際に利活用される可能性もある。 |
測量学における遠隔地教育の有効性に関する研究 平成12年度 |
山口 智弘 |
近年のコンピュータの性能向上やインターネットの急速な発展に伴い、音声や画像 データなどのマルチメディアデータをネットワークを利用して配信する技術が確立してきた。これによりコンピュータを利用した学習システムが一変し、各自のパソ コンでネットワークに接続し学習するオンラインWeb学習へと変わった。オンラインWeb学習システムは画像や音声、動画などを利用でき、双方向のやり取りができ るので能動的な教育システムを期待することができる。現在、多くの大学では教育改革が盛んにおこなわれており、受動的な教育スタイルから能動的な教育スタイル へと移ろうとしてきている。しかし、このような学習形態は一般の講義では難しいとされている。そこで必要とされるのが放送大学やCAIで利用している遠隔地教育 である。遠隔地教育は学習テーマに目を向けると、数学や英語などの基礎科目や資 格試験対策、IT関連にテーマが偏っている。インターネットが情報関連のみなら ず、あらゆる分野に進出してきた現在、他の専門分野に遠隔地教育が導入されてもおかしくない状況となっている。本研究は本学におけるネットワーク設備が充実し ていることや、学生全員がノートパソコンを所有していることに着目し、土木工学の専門分野の一つである測量学を取り上げ、オンラインWeb学習システムを用いた 遠隔地教育の有効性について検証をおこなっている。特筆すべき特徴は、学習システム内で学習時間や学習回数など進捗データを記録できるので、アンケートでは取 得できないデータを学習効果の判定に利用することができる点であろう。今後の本学の教育にも応用できる内容である。 |
砂防計画におけるGIS・リモートセンシング利用の可能性 平成11年度 |
山下 淳子 |
地すべり、土石流といった豪雨に伴う災害は毎年わが国のどこかで発生し、貴重な人命や財産が数多く失われている。 このような土砂災害を最小限に抑えるため、建設省や各自治体は、砂防計画に基づいて砂防施設の設置をおこなっているが、砂防計画は、多大な時間と労力をかけて繰り返しおこなわれており、その設計は、熟練した技術者の勘と経験に頼るとともに、 極めて多くの調査データを使用しなければならない。また、砂防ダムによって埋没する可能性のある埋蔵文化財や貴重種生物などの自然環境を考慮することも難しい。 本研究ではGIS手法を用い、最近では簡単にかつ廉価で購入できる数値地図とリモートセンシング画像(近い将来は高解像度衛星画像も利用可能)を使用し、砂防計画の管理および砂防計画を支援する シミュレーションシステムを構築することを目的とした。 |
高精度GPS測量の受信障害に関する実験的研究 平成9年度 |
鈴木 吉彦 |
GPS測量は人工衛星からの電波信号を受信することにより測位を可能とすることから、混信や反射による測位精度の低下が指摘されているが、現状では不明瞭な部分が多い。本研究では、人工電波による混信がGPS測量に及ぼす影響の検証を目的とし、放送電波塔近傍において受信実験を実施した。 その結果、混信電波を起因とする誤差が混入した場合の精度劣化について定性的な傾向を明らかにした。また、これらの対策として、精度向上には相殺効果が可能であることを示唆した。 |
地理情報システム(GIS)の地すべり災害への適用 平成7年度 |
村松 昇 |
北陸地方は各県下にまたがって地すべりが発生している特異地域である。 石川県では特に能登地方に集中して地すべりが発生している。本研究の目的は、広域性・周期性・同時性に優れた人工衛星データと様々な主題図データ(標高・傾斜・地質)を地理情報システム(GIS)の手法により統合し、近い将来において地すべりの起こり得る地域を特定するところにある。 この研究では、標高データより抽出された各流域における地すべり発生の割合と地形的特徴や人工衛星データの特徴との関係を調査した。 |
衛星データと地図データとの統合による地滑り地の特徴抽出に関する研究 平成6年度 |
今林 耕司 |
北陸地方は、新潟・長野・石川・富山の各県にまたがって地滑りが多発している特異地域である。 特に石川県における地滑りの大半は奥能登地方に集中しており、全国でも有数の地滑り発生地域である。本研究は、地図情報データと衛星データを統合することにより地滑り発生地域の特徴を抽出し、 将来的に地滑りの発生する危険性のある地域を予測する事を目的としている。研究成果として、地滑りとNVI・BAND6との関係、土地被覆分類とNVI・BAND6との関係などが得られ、 更に以上の結果を考慮した地滑り予測図の作成を行った。 |