参考資料
(1)加藤洋治,キャビテーション,槙書店,(1997).
(2)佐藤恵一,あわの発生メカニズムと制御およびトラブル対策(分担執筆,第6章キャビテーション気泡の発生と制御),技術情報協会,(1999).
(3)大場利三郎,キャビテーション研究の展望,日本機械学会論文集,B編,63巻611号,(1997),2264.
その他,多くのキャビテーションに関する文献
I.初生キャビテーション
  キャビテーションが発生し始める領域.文献によって定義は様々ではある.最初に発生した条件を取る場合や定常的に発生する条件を取る場合もある.本研究室ではキャビテーション崩壊時の衝撃パルスを計数しキャビテーション事象計数率より判断している.


II.サブ・キャビテーション
  キャビテーションが定常的に発生している状態であるが流れ場を対極的に変化させるほどの発生状態ではない.初生キャビテーションとこの領域では揚力係数などはほとんど変化しない.


III.遷移キャビテーション
  サブ・キャビテーション領域からスーパキャビテーション領域へ遷移する領域.この領域ではキャビテーションの非定常な振動,放出などが見られ高衝撃や圧力変動を示すことで知られている.


IV.スーパキャビテーション
  圧力低下によりキャビテーションが大きく発達し,翼形などにおいては後縁よりもキャビテーション長さが長くなる.一種のチョーキング状態である.このとき通常の翼形ではその性能が急激に低下する.しかし,翼背面ではキャビテーションが崩壊しないため翼自体への壊食はあまり生じない.
図 時間平均的なキャビテーション様相
図. 代表的なキャビテーション形態
図 キャビテーション数に対する衝撃加速度の変化
キャビテーションはその成長段階において,大きく4つの領域に分けることができる.
キャビテーションの状態
(a)バブルキャビテーション
  ほぼ球形の気泡が,主流に乗って移動しながら成長崩壊するもの.液体中の気泡核が高い場合顕著に現れ,低圧部流入する気泡核の成長に対応付けられる.


(b),(c)渦キャビテーション
  物体後流や翼端などの渦コア部に発生するキャビテーション.bは円柱軸と同じ方向に回転軸を持ついわゆる横渦中に発生したキャビテーションでその回転軸に垂直な平面に大きな衝撃を与える.cは流れ方向に回転軸を持つ縦渦中に発生したキャビテーションで,この場合,流路壁面への衝撃作用は低い.


(d)シートキャビテーション
  翼の表面に付着して見えるシート状のキャビテーションで,1つの薄い気泡の場合と小さな気泡群の場合がある.


(e)クラウドキャビテーション
  小さなキャビテーション気泡群が集まって,雲状に見えるキャビテーション.渦キャビテーションに含まれると考えることもできるかもしれない.翼形などの物体まわりの流れ場において発生し,非定常性な放出時には大きな圧力変動,崩壊時には非常に高い衝撃が発生する.
 特に、キャビテーション核は液体中の微小気泡(気泡核)の分布が大きな影響を及ぼす.固体材料に例えると材料中の巣や格子欠陥に対応付けられる.
・十分なキャビテーション核の存在
・十分な低圧
・十分な低圧持続時間
 キャビテーションが発生するためには以下に示す3つの条件が揃ったときに発生すると考えられている.
キャビテーションが発生するためには
 キャビテーションは流れ場形状により様々な形態で存在する.ここで一般的に知られているキャビテーション形態ついてその分類を示す.
キャビテーションの形態
 したがって,液体を高速で流す場合あるいは物体を液体中で高速に運動させる場合にキャビテーションは発生する.また圧力が回復する(高くなる)とキャビテーションは消滅(崩壊)する.このとき非常に高い衝撃圧が局所的発生する(数万気圧にも達する).このようなことからポンプやブロペラにおいて騒音・振動や壊食が生じ問題となっていた.一方で流体エネルギが集中することから,このエネルギの有効利用が積極的に行われている.
(1)流体機器の性能低下
ターボ機械などにおいては,プロペラが高速に回転することにより流れが加速され,圧力が低下し,キャビテーションが生じる.これにより流れのパターンが変化し,設計された推進力,効率を得ることができない.また,ポンプにおいて,吸込みヘッドが低くなると,ポンプ内部にキャビテーションが生じ,(ポンプの種類によって低下の仕方に違いがあるものの)揚程は低下し,効率が低下する.


(2)振動・騒音
後にも述べるがキャビテーションは様々な形態で存在する.キャビテーションがある程度大きく成長すると,伸張し放出されるような非定常な振動を呈す.このときに圧力の変動が生じ,流体振動,脈動そして時にはサージングを引き起こす場合もある.また,発生したキャビテーションは高圧場で崩壊し,局所的に高い圧力変動を発生させる.この高い圧力変動によって固体壁面を経て高い騒音が引き起こされる.


(3)壊食
キャビテーションは,流動中に圧力の高いところへ来ると崩壊し,その崩壊時に高い衝撃を発生する.これが固体壁面近傍で生じると固体表面上に壊食と呼ばれる破壊現象を引き起こす.非常に高い圧力が局所的に作用し,壊食を引き起こし,流体機器の寿命を著しく低下させる.一方,流体エネルギが局所的に集中するので,このエネルギを制御し利用することができれば,非常に有効なものとなり得る.
キャビテーションが発生すると。。。
 キャビテーションを簡単にいうと,液体中に泡が生じる現象で,一種の沸騰現象である.身近な現象では指がポキッと鳴るときに発生している.沸騰は通常,熱的な作用による発泡現象であり,キャビテーションは静圧低下による発泡現象である.液体の圧力が飽和蒸気圧以下に低下すると発泡する,つまり圧力が低下すれば常温でも発泡(沸騰)現象が生じる.
  流れ場中においてはベルヌーイの定理より理解できるように流速が増加すると圧力が低下する.その圧力低下がおおよそそのときの液体の飽和蒸気圧まで低下すると発泡する.

キャビテーションって?