紙飛行機

NHK超絶凄ワザ 究極の紙飛行機 始末記 


■紙飛行機の製作について■
 5月下旬、NHKから超絶凄ワザの紙飛行機編のお話があり、研究室では大学院1年生のD名啓太君や増岡諭君らを中心にやってみようということになりました。テーマは「どこまでも飛び続けられる紙飛行機」で、課題は1:10の勾配が付けられた長さ20m、一辺1mの四角断面の直線トンネル内を壁に当たらないように滑空するというものでした。最初は20mに到達するための飛行経路を検討しましたが、当初の趣旨である「どこまでも飛び続けられる」という点を重視し、私たちは紙飛行機の性能として滑空比10を得ることを目標にしました。また、到達した場合はより飛行速度の遅い方を勝者とするとのことでした。
 研究室にある翼型データから、機体の揚抗比L/D≧10を満たすためには、主翼翼弦長cを基準とするレイノルズ数(Re)を10,000以上にする必要がありました。飛行速度を5m/sとするとc=40mmでReは約13,000で、主翼だけのL/D=11程度と見積もりました。これでは機体全体では条件を満たさないので胴体や尾翼の抗力をできるだけ小さくする必要がありました。
 主翼翼型は当初は円弧薄翼にしましたが、製作精度を上げるため30%位置で折り曲げた薄翼にし、キャンバーは5%としました。計算上、3%では揚力係数が少し小さく6%以上ではL//Dが小さくなるためです。6%折り曲げ薄翼の二次元翼データを下図に示します。揚力線理論に基づく三次元翼への変換を行うとL/Dは上記の結果より小さくなりますが、この低レイノルズ数領域ではもう少し高くなります。主翼のアスペクト比はレイノルズ数効果との兼ね合いを考えて6に決定しました。
 番組映像にありましたように胴体は極力細くしました。さらに尾翼にコルゲート翼型を使いました。これは番組収録中に思いつき、大学院生のD名啓太君が風洞実験を行いました。この部分は番組映像にはでてきませんでした(水槽実験による流脈線の可視化映像だけが放送されました)が、風洞実験結果から薄い平板(厚さ1%)より最小抗力が少しだけ小さいことが分かりました。なにより、翼厚5%を持たせたことでコピー用紙で軽く作ることができました。飛ばしてみますと、尾翼が厚くなったことでピッチとヨー方向の調整が殆どできなくなったのですが、逆に取付け角が決まれば形状の変形が殆どなくなりました。最終的には主翼のタブでロール方向の調整だけを行うことにしました。
 発射装置は一本の糸ゴムで射出するようにしていたのですが、機構的な問題が完全に解決できず、一回目の飛行で大きく曲がったのは射出時に機体が傾いたためと思われます。その点をすぐに見抜いたD名君は、二回目はうまく射出し飛行に成功しました。安全策を取って少しだけゴムの引く量を大きくしました。結局、平均滑空速度は5.1m/sでした。私たちの実験では約4.5m/sまで下げることが可能だったのですが、遅くすると壁に接触する確率も増加しました。
 何度も行った試験飛行では学部4年生の鵜山渉太君等が積極的に協力してくれたのは映像の通りです。
 また、本学航空システム工学科 片柳亮二教授には飛行について貴重な助言をいただきました。
 さらに今回の挑戦に関して、学生諸君をはじめ多くの方から応援いただきました。この場を借りて厚くお礼申し上げます。
                                                     2014.7  岡本


Hidaka. H., Okamoto. M., "An Experimental Study of Triangular Airfoil for Mars Airplane", 29th International Symposium on Space Technology and Science,2013