胃壁縫合手術装置の開発

 近年,術後患者の生活の質を重視する傾向にあります。手術をすることで命を助けることができますが、その代償として食事や、入浴、排便などの日常的な行動が困難となる場合があります。

 例えば現在、主流とされている開腹手術とは、腹部を切開することで臓器治療を行う手術方法であり、腹部を切開すると大きな傷跡が残ります。そして傷口が完治するまでに多くの体力を消耗するため、術後数週間は歩くことや、食事ができない状態が続きます。

 一方、内視鏡的処置術は口や鼻から内視鏡を挿入するため開腹手術のように皮膚に傷をつけず、傷跡が残ることはありません。

 内視鏡的処置術には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection)と内視鏡的全層切除術(EFTR:Endoscopic Full Thickness Resection)があります。ESDは胃を構成する粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の5つの層のうち早期がんとも言われる粘膜下層以内での腫瘍の切除のみに使用でき、EFTRは胃の全層を切除することができる。しかしながら、がんを切り取った後の縫合する方法が未だ確立されていないため、縫合装置の開発が必要とされています。

 本研究では、進行したがんの治療にも内視鏡を用いた手術を可能とするため、内視鏡縫合装置の開発に取り組みます。