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低計算コスト解析モデルを用いたヘリコンプラズマスラスタの内部現象と性能向上に関する研究
西川 慧

Keyword深宇宙探査、電気推進、プラズマ、長寿命、宇宙推進、プラズマ推進、ヘリコンプラズマ

近年、深宇宙探査や長期間の衛星ミッションの増加により、電気推進機への需要が高まっている。従来広く用いられてきたホールスラスタやイオンスラスタは高い比推力と運用実績を持つ一方で、電極の侵食による寿命の制限や中和器の必要性といった課題を抱えている。 これらの課題を克服する次世代の推進機として、ヘリコンプラズマスラスタ(Helicon Plasma Thruster, HPT)に着目した。HPTは電極を用いず、ラジオ波によって高密度のプラズマを生成し、外部磁場によってイオンを加速する構造である。そのため、長寿命かつ構造が簡素で信頼性が高く、さらに中和器を必要としないことから、システム全体の小型化や軽量化に寄与する利点を持つ。 一方で、HPTには技術的な課題も存在する。たとえば、同等の入力電力条件において、ホールスラスタやイオンスラスタと比較すると、推力が小さく、推進効率も劣る傾向が報告されている。これは、RF電力から推力への変換効率がまだ十分に高くないことが要因である。実際、初期の実験では変換効率は数%にとどまっていたが、近年では東北大学などの研究により30%に迫る変換効率が報告されるなど、性能は向上しつつある。しかし、依然として推力密度の向上やエネルギー損失の抑制といった課題は残されている。 本研究では、HPTの性能向上を目的として、低計算コストでありながら物理的整合性を保つ解析モデルを構築し、HPT内部におけるプラズマ挙動の再現と分析を行う。低コストな解析手法を用いることで、多くの試行を短時間で実行することができ、パラメータスタディや設計空間の探索を効率的に進めることが可能となる。これにより、HPTの最適設計に向けた知見を獲得し、性能向上に資することを目指す。