小木研究室

2014年度オープンキャンパス電気泳動結果


   2014年7月19日に開催されたオープンキャンパス!!
   ご参加頂き、誠にありがとうございました。
   

   皆さんには遺伝子検査のほんの一部分を体験して頂きました。

   「学科紹介&体験」で抽出したDNAの電気泳動結果を載せましたので、
自分自身の遺伝子型を確認してみてください。

各遺伝子型の結果について


  今回の実験では、皆さんのアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の遺伝子型についての解析を行いました。
  ALDHは一塩基多型(SNP)の違いで分解のレベルが異なってきます。
  ALDHの遺伝子型を決めているのは、487番目のコドンです。
  正常型(Normal)はg、変異型(Mutant)はaです。
    
  487番目のコドンのgがaであると、グルタミン酸(gaa)ではなく、リシン(aaa)というアミノ酸になってしまいます。
  このALDHは塩基配列が1個置き換わっただけなのに、アセトアルデヒドを酢酸に変える能力がなくなっています。
  そのため、変異型(M)をもっている人は、お酒を飲むとエタノールから生じたアセトアルデヒドが分解され難くなります。


  ヒトの遺伝子は両親から1つずつ受け継いでいます。
  今回のアルデヒド脱水素酵素の場合、両親とも遺伝子型がNNであると父方N、
  母方Nをそれぞれ受け継ぐので子の遺伝子型はNNになります。
   
  遺伝子型がNNの人は一般的にアセトアルデヒド分解能が高いと言われています。
  遺伝子型NMの人は、父方、母方から異なる遺伝子をもらっているということです。
  そのため、遺伝子型がNMの人はある程度アセトアルデヒドの分解をすることができます。
  遺伝子型がMMの人は、アセトアルデヒドの分解能が低いと言われています。
  今回の結果では一塩基多型を用いて、プライマーを設計し正常型(Normal)のプライマー、
  変異型(Mutant)のプライマーの2種で解析を行うことで、
  皆さんがどの遺伝子型をもっているかの判断を行いました。
  PCRで増幅させたサンプルをアガロースゲル電気泳動にかけることで遺伝子型を判断しました。
  判断の区別を以下の図に示します。

   

正常型の接合型(N N)の人はNormalのみの蛍光がみられます。
これは父、母の両方から正常型の遺伝子をもらったため、
遺伝子型は正常型の接合型となり、
電気泳動を行った結果Normalのみの蛍光がみられます。


   

変異型の接合型(M M)の人はMutantのみの蛍光がみられます。
これは父、母の両方から変異型の遺伝子をもらったため、
遺伝子型は変異型の接合型となり、
電気泳動を行った結果Mutantのみの蛍光がみられます。


   

正常型と変異型の接合型(N M)の人はNormal、Mutant共に蛍光がみられます。
これは父、母のどちらか一方から正常型の遺伝子をもらい、
もう一方からは変異型の遺伝子をもらっています。
そのため、正常型と変異型の接合型となり、
電気泳動を行った結果Normal、Mutant両方の蛍光がみられます。


  このようにアガロースゲル電気泳動を行うことで、皆さんのアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の遺伝子型を判別しています。
  この結果を、今回の結果として掲載します。


Open campus 後の実験に関して


  今回、皆さんに抽出していただいたDNAをもとに、お酒に強いor 弱い 遺伝子型なのかを判別するための操作を行いました。
  DNA抽出後に行った操作はPCR (polymerase chain reaction)と電気泳動です。

  [PCR]
     皆さんに抽出していただいたDNA (全情報) の中から、ALDH2-1,2-2 に関する情報を持った部分(DNA断片)のみを
    判別に必要な量まで増幅しました。【図a参照】

  [電気泳動]
     PCRで使用した試薬(プライマー)とDNAがどのように反応したかを視覚で判断するために、
    ゲルに着色したDNA断片を流して確認しました。
    電気泳動によって皆さんの遺伝子型がNN (正常型の接合型) , NM (正常型と変異型の接合型),
    MM (変異型の接合型) の3パターンに区別できました。【図b参照】
 
     図a
  

   
    図b

ゲルの見方に関して…


   ゲルには皆さんの遺伝子型を判別する印以外に、他の情報も混じっています。
   どの部分を見ればいいのか?他の情報にはどんな意味があるのか?を簡単に解説いたします。


       



  @ラダーマーカー
  ラダーマーカーを基準としてSample DNAの分子量を測定します。
  増幅したALDHの遺伝子型は約135 bp なので、ラダーマーカーを用いて判断しました。

  ADNA
  PCRによって増幅したDNA断片が泳動した結果を表しています。
  分子量が小さいほど図の下方向に向かって流れていきます。

  Bプライマーダイマー
  PCRに用いたプライマーが他の部分についたことによって、
  異なるDNA断片が増幅された場合に出現します。

   電気泳動によって判断できる情報は、実験中に起こった不備やDNAの問題なども反映されるので、
   研究過程の様々な部分で用いられる手法です。

実験結果



   

   01 遺伝子型(NM)
   04 遺伝子型(NM)
   06 遺伝子型(--)
   07 遺伝子型(NM)
   08 遺伝子型(NM)
   09 遺伝子型(NN)
   11 遺伝子型(NN)
   12 遺伝子型(--)

   

   13 遺伝子型(NN)
   14 遺伝子型(NM)
   15 遺伝子型(NN)
   16 遺伝子型(--)
   17 遺伝子型(MM)
   19 遺伝子型(NN)
   20 遺伝子型(NM)
   21 遺伝子型(NN)

   

   23 遺伝子型 (--)
   26 遺伝子型(NN)
   27 遺伝子型(NN)
   28 遺伝子型(--)
   30 遺伝子型(NN)
   31 遺伝子型(--)
   33 遺伝子型(NN)
   34 遺伝子型(NN)



   ※注意 DNAは実験過程の物理的衝撃や温度によって簡単に壊れてしまうほど、取扱いの難しい物質です。
        遺伝子型に--がついている人は、抽出段階でDNAが壊れてしまったり、目的のDNAが得られなかったなどして、
        電気泳動での遺伝子型を判定することができませんでした。誠に申し訳ありません。
        また、みなさんに抽出していただいたDNAで結果が得られなかったサンプルは、遠心管に髪を入れられた方のみ、
        再度抽出から行った結果を提示いたしました。
        こちらで預かったDNAは個人情報となるため、実験後に処分いたしました。
        以上の注意点のご理解のほどよろしくお願いいたします。



   アルデヒド脱水素酵素の正常型と変異型の違いは、たった一塩基です。
   今回の実験は、この一塩基の違いを調べるための実験でした。
   そのため、実際はホモ接合型なのにヘテロ接合型という結果が出ることもあります。
   また、本人の趣味・嗜好・年齢・体調なども、お酒が飲める・飲めないということに関わっています。
   今回の実験結果をそのまま信じるのではなく、お酒が飲める・飲めないを判断するための材料の一つとして頂ければ幸いです。



   7月19日(土)に行われたオープンキャンパスでは、たくさんの方にご参加いただきありがとうございました。
   今回の体験で少しでも応用バイオ学科に興味を持って頂けたら幸いです。
   皆様が本校にご入学されるのを楽しみにお待ちしております。

   
アクセスカウンター
トップページ http://www2.kanazawa-it.ac.jp/kogi/
Copyright © 2008-2014 Kogi Laboratory. All Rights Reserved.