技術者と技能者

1.技術に関する仕事と社会との関係

現在先進国の社会は、複雑な(科学)技術システムにより構築運営されており、例えば電気、水道、ガス、携帯電話、TV、交通機関、空調のない社会を考えれば分かるように、技術は社会の共有財産としてなくてはならないものになっています。
また社会に新しいシステム、ものやサービスを開発・導入し、それを安全に安心して使えるように維持していくために、多くの技術に関連した仕事があり、多くの種類の技術関連従事者が関与しています。

2.技術に関与する仕事と従事者のタイプによる分類

日本では技術者は大学卒相当の技術能力のある人として医師や弁護士のような専門的技術的職業従事者に分類され、平成17年国税調査によると全就業人員の3.7%の約230万人を占めています。
技能者は特殊な技能資格等を有する人を指すのが普通です。実際には技術系雇用者の半分位を仕事に関係する知識と技能を有しているという判断で、技能者とする場合もあります。各々の仕事を国際的な区分で 技術者I(エンジニア)技術者II(テクノロジスト)技能者(テクニシャン)に分類すると表1のような特徴があります。

表1 技術関連就業者のタイプ別の特徴

技術者I
(設計、開発等)
技術者II
(製造、管理等)
技能者等
問題の種類 稀に起こる複雑な問題 よく起こる類の問題 よく起こる問題で実務範囲
問題解決法 簡単な解がない 対処法あり 標準の解決法
必要知識レベル 深い工学技術や抽象思考 原理の知識 限定的原理の理解、実務知識
仕事での利害の衝突 工学技術その他との利害の衝突 一部であり 問題はあるが 原則としてなし
使用資源 広範な資源
(人・物・金・情報)
色々な資源 限られた資源
革新 工学技術の原理の
新規な方法での創造的活用
革新的方法で
新材料、方法、工程の活用
他に問題を起こさないで
限定的技術問題の解決
高等教育の期間 4年以上の認証された教育 3年以上の認証された教育 2年以上の認証された教育
仕事の結果の重大性 問題について重大な結果 概ね狭い範囲の結果 局部的に重要な結果

3.法令・マニュアルと人々の安全、の技術者倫理

表1の区分に一般作業者を加えて、その仕事を通じて人々の安全、健康、福利、環境を守るため、法令、仕事のマニュアル(作業標準書)、技術者倫理を守ることとの関係を考え整理すると、表2のようになります。
一般作業者は基本的には作られたマニュアルを正しく遵守することが求められ、技能者等はその技能を生かしてマニュアルに従って間違いなく実施していくことが求められます。
しかし技術者はそのマニュアルを作るまたは許可を与える責任者の立場であり、仕事の総合結果に責任を持ち、技術者倫理の率先実行者である必要があります。

表2 各レベルでの技術に関する仕事の特徴

技術者I 技術者II 技能者等 一般作業者
仕事の範囲 広い やや広い やや狭い 狭い
選択肢の困難さ なし
主な仕事 設計・計画 計画・実施 製造・保守 各種作業
マニュアル 作成責任 作成実施責任 基本的に遵守 遵守
技術者倫理
法令を守る

◆注意・・・◎:適用される ○一部適用される △:適用されない

4.技術者は自立していることが前提

技術者は難しく大きな影響のある判断を迫られるので「自立した技術者」が前提となっています。
自立」というのはその字の形のように、「他への従属から離れて一人立ちしている」ことであり、経済的・精神的自立等が前提とされます。もう一つ「自律」という言葉があります。
「律」は行動と手に持つ筆が一緒になった字で、「自分で自分の規範に従い、判断し、適切に行動する」という意味です。

また当然教養(社会人として必要な広い文化的な知識)も組織や企業等のリーダーとして活躍する上でも非常に大切な要素です。逆にそのような難しい判断や局面に遭遇したくないとか責任を負いたくないと考える人は、自分の技能を使いマニュアルに忠実に従う技能者の仕事が向いていると思います

5.技術者と技能者の仕事の違いの例

表3にその例を示しますが、その領域で確実に仕事をしないと大変な問題になるという意味ではその重要性は一緒です。

表3 技術者と技能者の仕事の分担

領域 技術者の仕事 技能者の仕事
自動車 エンジン、メカトロの設計、整備マニュアル作成
製造工場の製造技術的マニュアル作成
製造計画を技術的に作成・管理・実行
車の整備、組立作業の一部
環境 環境への影響を調べ対策を立案
環境測定マニュアルの作成
環境データの測定・分析
電気 電気主任技術者 電気工事士
建築 建築設計、施工計画(工程、原価、品質、安全、衛生)
の作成および新築やリフォームの施工監理に
携わる一級(または二級)建築士としての仕事
大工、左官、瓦職人、重機オペレータ、
内装工など建築物の現場施工に関する仕事
情報 システムエンジニア
(ITアーキテクトなど)
データ入力・整理
土木 公共事業の計画、設計、施工管理および維持管理に
関する工学的業務に携わる一級(または二級)土木施工
管理技士としての仕事
職人、重機オペレータ鉄筋工など土木構造物の
現場施工に関する仕事